「よお、起きたのか」
部屋にいたのは狛津さんでこちらを見た後にまた元に戻り何やら作業をしている
「あの、喉が渇いておりお水を頂いてもよろしいですか?」
「ああ好きなだけ飲みな」
居間を通り抜け台所に着き水を一口二口飲むと美羽は部屋へ戻ろうと居間へ向かった
今だに作業をしている狛津に美羽は興味本位で伺っていた
「何をしているのですか?」
作業を一旦止め、美羽の方へと向けて見せた
「・・・これを直してんのさ」
「それな何かの部分になるのは分かるのですけど一体何を・・・」
見せられた物は手に納まる程の大きさで左右別々に反られて中央には小さな穴が空けられた木であり彼の逆の手には工具が握られていた
「まぁそうだが、これを付けたら何か分かるだろ」
そう言い小さな穴に長細い棒を差し込みもう一度美羽へと見せた
「成る程、竹とんぼですね!」
「ああそうさ。ちと近所の子供に頼まれてな」
竹とんぼの羽の部分を工具で削り羽を整えていく作業をする狛津に邪魔にならない様にその作業を眺めていた。どうやら竹とんぼに興味を示しておる様で狛津は何も言わないので見てても良いのだと承諾した
「つかの所伺いますが狛津さんは工芸師なのですか?」
「違うな、俺は工芸師など立派な職など持っちゃいないさ。ましてや俺などが名乗る程簡単な職じゃねえのさ」
「そうですか」と気を悪くしたのではと思いながらも美羽は彼の手先を見つめた
一般の人がやるには手先が器用過ぎであり、彼の手を見ても何かやっていたのではと思わせてならない。ましてやこの様な立派な家を持つ者であるからにはただ者ではないのでは・・・
あれこれと思考を巡らしていたら急な彼の声に不意に我に戻る
「俺が考えるにはあんたがあの櫛を造る資本者なのだろ?」
ビクリと肩が振るえる。なぜこれ程彼の言葉に反応してしまったのかは自分にも分からないがまるで見透かされているように感じた
「・・・確かに私ですがそれが・・・」
やっとの事で返せた言葉はとても弱く聞こえたであろうが今はそれで精一杯であった
「”正しくは”柄がだけどな」

