小豆色の建物が並ぶ工の国と呼ばれるだけあり古い造りだが部屋全体が細かな細工などを施されている見慣れている家内を見渡す


耳を澄ませば何処からか琵琶の音色が聞こえてくる

稽古でもしてるのだろうと予想がつく

男は仰向けの間々視線は天井からたいして広くは無いがこちらもそれなりに綺麗に整えられた庭を眺める

「練習熱心だねぇ」

男は起き上がり庭に出て下駄を履き外に出た




「おや出掛けるのかい?」

庭から出て道の横から近所のおばさんに声を掛けられ腕を裾にしまいながら男は答えた


「おう、ちょっくらな」

「またそんなんで!鍵もせずに、家がぺーぺーになるでしょうが」

「この家に盗むもんなんか何もねぇさ。盗っ人さんお好きにどうぞってな」


呆れた顔がより一層呆れ顔になったおばさんに男は軽く手を振り去っていく


鈍色(にびいろ)の少し長い髪を無造作に後ろに束ねのらりくらりと歩いていく男の姿におばさんは溜息をついたのであった



















鈍色:濃い灰色