坂井家の事情






「一瞬どころかいつもより、長引いてないか?」

大輔は時計を見ながら、圭吾に話し掛けた。

清掃終了まであと1分余りである。

いつもの対決では、ほぼ3分以内でさやかの得意技『腕ひしぎ十字固め』が決まり、決着が着くのだ。

しかし既に5分以上は経過していた。

それだけ今回は悠太も、本気モードだということなのだろうか。

「そろそろ悠太が、アレを使う頃だと思うんだけど」

「アレっていうとお前の言っていた、あの必殺技ってやつか?」

「勿論」

そう答えた圭吾の顔は、心なしかいつもより楽しそうに見える。

「しかしアイツ、本当にアレを使うのかな。
さやかはああ見えても一応……何となく、万が一、多分……だけど、女なんだぜ。
いくら悠太が馬鹿でもみんなが見ている前で、流石にアレをするとは思えないんだけどな」

「いいやアイツなら、絶対にやる! なんなら賭けてもいいよ」

何故か圭吾は断言した。

「じゃあ圭吾は、悠太が勝つと思っているのか」

「いや、勝つのはさやかだ」

これもまた即座に、キッパリと断言する。