坂井家の事情

「いつも坂井が一方的にやられている、詰まらない対決だよ」

「でも『今回は二人とも本気でぶつかり合うはずだから、絶対面白い試合になるよ』って、川ぽんが言っていたぜ」

「格闘技の何処が面白いのか、俺には全く理解できん」

斗真は首を振りながら、眉根を寄せた。

「それに今月は掃除当番じゃないから、俺は授業が終わったら直ぐに帰る予定だったんだ。
なのに何故、放課後居残ってまで俺が部長を……先輩たちを……」

ブツブツと呟いている顔が、再び青ざめてくる。

その様子を雅昭は、キョトンとした表情で眺めていた。

「ふーん。でもお前、ノートのコピーが取りたくて、この役目を引き受けたんだろ」

「う…そりゃまあ、そうなんだが……」

「けどそんなに嫌なら無理に、川ぽんの言いなりにならなくて良かったんじゃないか。
後で俺がコピーしたやつを貸してやってもいいんだし」

「そういえばそうだな。
吉澤もそこまでして川上に、協力なんかしなくてもいいと思うぞ」

二人から責められるように見詰められた斗真は、何故か言葉に詰まっていた。

その視線も、宙を彷徨っているように見える。

「いや……ええと…ノートだけではなく……その」