この対決には事前に制限時間を設けており、『清掃時間内に決着がつかなければ引き分け。互いの罰ゲームも無効』というルールを作った。

朝二人の会話を聞いていた圭吾が「どうせやるなら…」ということで、それを提案してきたのである。

誰もが「直ぐに悠太のほうが負けるだろう」と思っていたので、皆賛成したのだ。担任の綾子が特に何も言わないのは、それを聞いていたからだろう。

「ああ…! そういえば」

大輔はようやく思い出したようだ。

「掃除の時間だったら少しくらいは、騒いでも大丈夫なんだっけ?」

「保証はできないけどな。この教室は職員室から離れた場所にあるし、先生も掃除の時間にわざわざここまで上って、見に来ないだろうと思ったのさ」

教室は学年別で3年は1階、2年は2階、1年は3階と割り当てられていた。因みに職員室は1階にある。

「それに今日職員室を外から覗いてみたら、思った通り先生たちは皆忙しそうだったよ」

「でもシバセンは暇そうだったな」

「問題を作る担当じゃないからな。でもああ見えて本当は他の先生たちと一緒で、結構忙しいのかも知れないけどさ」

「え? テスト問題って、先生が作ってるの?」

「あれ、知らなかったのか。確か今回1年の数学は、羽田(はねだ)が担当するらしいよ」

さも当たり前のことのように、サラリと答える圭吾。

「……お前そういう情報って一体、何処から仕入れてくるんだよ」

「ふふふ、企業秘密だ」

圭吾は不敵な笑みを浮かべていた。

情報源を教えて欲しいと言っても絶対に教えてはくれないだろうことが、大輔には分かっている。