坂井家の事情

ズバリ返されて、悠太は次の言葉を一瞬言い淀む。

「だ、だから……だからこそ、ここでガツンとだな、さやかに分からせる必要があるのさ」

「何を?」

「俺が小学生の頃の――今までの俺ではないということをだよ。それを皆の前で見せつけてやるのさ」

悠太の瞳に熱い闘志が宿った。

だが。

「勝ち目はあるのか?」

「ない!」

その勢いのままで、キッパリと即答するのである。

大輔はその潔さに、感心するのと同時に呆れ返った。

「……お前な」

「だから、これから勝つ方法を探すんじゃないか」

と、ここで二人の遣り取りをじっと見ていた圭吾が難しい表情を崩さずに、おもむろに口を開いた。

「それじゃあ僕が、とって置きの秘策を伝授してやろうか?」

悠太には圭吾の眼鏡が、再び光を放ったように見えた。