坂井家の事情

「そういえばどうするんだ、悠太。さやかとの対決」

ごく自然に然り気なく大輔は尋ねたのだが、その足は反射的にピタリと止まった。

「……お前、こんなところで嫌なことを思い出させんなよ」

ギギギ…とロボットのようにぎこちなく、首を大輔の方へ向けた。その顔はいつになく強張って見える。

「でもこの授業が終わったら、もう放課後だぜ」

「そりゃそうなんだけどさ」

ここで悠太が突然、思い詰めたかのような表情になった。

「けどさやかとはそろそろ、決着をつけないといけないんだよな」

目を瞑り、神妙な面持ちで口を開く。

「決着?」

「ああ、だって俺たちはもう中学生なんだぜ。ずっと負けっぱなしっていうのも、何か情けないだろ」

「……確かにな」

圭吾は考え込むように、顎へ手を置いた。

「今まで一勝もできないなんて、かなりなヘタレっぷりだよな」

「ヘタレ言うな」

「だが事実だろ」