「先生、何で俺たちがこんなことをしなくちゃいけないんですか。先生も少しくらいは手伝ってくれよ」

「これって絶対、先生が頼まれた仕事だろ」

「あ! きっとそうだ! 自分がやりたくないからって、俺たちにやらせてるんだ」

「しょっけんらんよう、てやつだぞ。
おーぼー、てやつだぞ」

「胸も色気もないくせに、ひでぇぞ先生」

「お前ら、いい加減にしろ!!」

とうとう我慢の限界を向かえた綾子は、口々に文句を言う二人を一喝するのだった。

更に大輔に対しては「特にお前は一言余計だ!」と注意しながら、両側からこめかみを拳でグリグリと締め上げている。

これはかなり痛い。大輔も堪らずに悲鳴を上げるほどだった。

「口を動かす前に手を動かす! 坂井、このファイルはそこの棚だぞ!」

綾子は「暴力教師!」と涙目で叫んでいる大輔を押さえ込みながら、目の前の分厚いファイルを肘で指した。

あの痛みの経験者でもある悠太は慌てて手を伸ばすと、今度は文句も言わずに素直に従っている。