□桃坂高校□

「はよー」

「翔、おはよー」

同じクラスのヤツらがちらほら挨拶を返す。

俺は普段どおり席に着こうとしたんだが・・

「翔、翔、翔、翔、翔、翔!」

座る直前に俺の名前が6回ほど連呼された。

「朝からうるさいねん!なんや!」

俺はそいつに向かって怒鳴る。

東城犬、俺のクラスメイト。

犬は少しトーンを落とし、俺に言う。

「悪い、いや、あんさ・・・落し物したんやけど」

「んで?」

「仕事、頼めるか?依頼や、依頼」

「ええけど、お前からは金徴収するで。」

「なんでや?!」

「うるさいねん、朝から。」

「そんな理不尽な理由かい!嫌やわそんなん!」

更にうるさくしてしまった。

「嘘や、嘘。分かったから落としたものって何や?」

俺は犬に尋ねる。

「ネックレスや」

「ネックレス?お前そんな校則違反のものを・・・」

「親父がくれた大切なネックレスやねん!毎日つけとらんと落ち着かんし、学校で落としたなら早う見つけないと没収されてまうし・・・・」

コイツは感情が高ぶるとうるさいことが判明した。

とりあえず黙らせる。

「あー分かった、捜せばええんやろ?ちょい肩借りるで」

俺は彼の肩に意味もなく力を込め手を置き、目を閉じる。

犬は微妙に顔をしかめるが、俺の胸中を察しているため、反抗しない。


「落としたのは、いつや?」

静かに尋ねる。

「昨日から今日の朝の間や」

彼の答えを聞き、俺はそっと息を吐く。

しばらくの沈黙。

俺は目を開けた。

「どこや?!どこに落としてた?!」

「静かにせぇ!えーっと、あのなぁ・・・」