「・・・よう」

「え?」

「確かめよう。被害者が一体誰なのか。」

俺は絶対に被害者のことも知っておくべきだと思った。

それは、紗枝も同じだった。

「せやな。確かめよ!確かめなアカン!!」

俺達は頷きあい、先輩と被害者のいる部屋へと近づく。

ガチャ

俺は躊躇いもなく、ドアを開けた。

すぐに先輩と目が合う。

「狼谷くん、何か分かりましたか?」

先輩はニコニコしながら俺に問う。

「いえ、まだ何も・・・・。」

俺は間をあけて言う。

「だから、調べに来ました。被害者の方を。」

「被害者を?」

途端に先輩の顔から笑みが消える。

俺はその瞬間を見逃さなかった。

「・・・はい。被害者の方、調べさせてもらいます。」

俺と紗枝が被害者に近づこうとしたその時。

「ダメだ!!」

後ろからの大きな声が俺達の動きを止めた。

振り返ると、凄い剣幕の先輩が立っていた。

今まで見たことのないような、

まるで何かを隠しているような、そんな表情。

明らかに焦っていた。