「何か用ですか?榊紗枝さん、狼谷翔くん。」

「なんで俺達の名前を・・・・?」

何気に犬の名前がなかったことに対しては皆スルー。

「ちょっとした有名人ですからね、存じ上げております。」

丁寧な言葉遣い、眼鏡をかけたインテリっぽい雰囲気。

女子に人気ありそうだな、とか思いつつ、山崎先輩を見る。

「でも、いいんですか?もうすぐチャイムが鳴ると思うのですが」

そう言われ、時計を見ると、あと1分ほどしかない。

「やべっ」

「ほんまや!じゃ、山崎先輩、放課後また来ます!」

紗枝はちゃっかり放課後に会う約束をし、俺達は教室へと走る。

「なぁ、狼谷!」

「なんや」

「山崎先輩めっちゃカッコ良かったな!惚れてまうわー」

だからなんやねん、そんなこと言ってる場合やったらもっと早く走らんかい。

と言いたいが、足引っ掛けられて転びそうなのでやめる。

「そうやな、というか、なんで関西弁じゃないんや?山崎先輩。」

「山崎先輩、こっちの人やないねんて。引っ越してきてん」

隣で走ってる犬が俺の質問に答える。

「なんでそんなことお前が知ってんねん」

俺は地味にツッコミながら、教室が見えたことを確認して、少しスピードをあげる。

「実は俺ん家の近くに住んでんねん、山崎先輩。」

犬はなんだかどや顔。

「いや、どや顔するとこやないやろ、今」

紗枝がツッコむ。

「ええやん!たまには俺に活躍させてや!近くに住んでんのにさっき俺の名前出なかったことが結構ショックやねんから!!」

さっきのヤツ、結構ショック受けてたらしい。

「だって近いんやで?1つあけてお隣さんやねんで?俺は知ってんねんで?なのに向こうは知らんて?こんなショックなことある?!ねえ、ある?!」

「うるさいねん!!はいそーですねショックですね!それはショックです!!」

「もうショックすぎてうちやったら倒れてまうかもしれんわ!!」

走りながら俺と紗枝は犬の言葉に乗る。

否定しすぎるとうるさくなりそうだったので、本心では思ってなくても、乗る。