小銭は1円5円10円ばかりだ。
仕方なく、千円札を出そうとしたその時、はらりと小さな紙きれが落ちた。
レシートだ。


-30% ソウザイ パン
-30% ソウザイ パン
―20% トクノウ ギュウニュウ
―50% ワカドリ カラアゲ
―10% ブタ バラ


レシートには、値引き表示がずらりと並んでいた。
うちのお袋みたいだ。

そう思った瞬間、俺の頭の中にパートから帰ってくるお袋の顔が浮かんだ。
時給750円のお袋が、この財布と同じだけ稼ぐために、いったい何時間働いてるのか…



俺はジュースはやめにして、家の近くの交番に財布を届けた。
おまわりは、財布と俺の顔を何度も見比べて大笑いしてから、俺に缶コーヒーをおごってくれた。
拾った財布を届ける高校生ってのは、珍しいものらしい。


まあいいか…

俺はつぶやいた。


腹が減った。
早くうちに帰ろう。