『 レ シ ー ト 』


学校から家までのルートは、二つある。
学校は、三舘と小和田をつなぐちっぽけな私電の途中にあり、私電と並行に走る国道沿いに俺の家がある。
一気に国道に出て、ラーメン屋やマックやTSUTAYAやブックオフの立ち並ぶ寄り道の誘惑の多いルートと、私電沿いから住宅地を斜めに突っ切る近いけど面白みのないルート。
チャリ通の俺は、大抵は国道ルートを通ってダラダラと帰るのが常だったが、久々の部活休みの今日はストイックな方のルートを選んだ。
今月は寄り道しすぎた。
結果、俺は財政的な事情でストイックにならざるを得ないのだ。

緩やかな坂を上り、児童公園の脇を通り過ぎようとしたその時、俺の視界に黄色い何かが飛び込んできた。

財布だ。
札を折らずに入れて、ポイントカードや会員証が山ほど入れられる、巨大な財布だ。

周囲には誰もいない。
俺は素早く財布を拾いあげた。
風水的に縁起がよくて、金運を上げてくれるはずの黄色の財布を落としてしまうなんて、よっぽどツイてない人だ。

中を確かめる。
諭吉が2人英世が3人。

すげえ!
オーセンティックモデルのレプリカユニフォームが買える!
ミランのサードユニ!
あれは友達誰も持ってない。

そうか、これはきっとご褒美だ。
日頃の心がけのいい俺に、神様がご褒美をくれたんだ。

俺はウキウキしながら自販機を探した。
とりあえずジュースをゴチになろう。

書道教室の前の自販機で、俺は黄色い財布を開いた。