「長月……ッ!」


「歩夢……」



「水無月…なんで?俺より師走が大事なの?」


「そういう訳じゃ…」


「そうにしか聞こえねぇよ…!だって、別れたら師走が得するじゃん!俺は傷付く…つまりッ…水無月は師走の方が大事って思ってんじゃんかよ!」


「違うよ!師走のためだけとかじゃなくて、自分の気持ちが曖昧だから…」


「曖昧でいいから…!曖昧で良いから…俺から離れないでよ…!」


俺は泣いていた。


水無月を離したくなかった。



「水無月を困らせんなよ」


師走が水無月を抱き寄せた。


「師走ッ…離して!」


水無月は必死に抵抗するが師走は離すつもりはないらしい。


「………もういいよ」


俺は、もう、疲れた。



「いいよ……水無月と別れる
どうせ、水無月だって師走を選ぶんだろ!?
なら先に水無月と別れるよ!
忘れてやるよ…水無月なんか…水無月なんかもう知らねぇ!!!!!」


俺は、体育館のトイレに逃げ込んだ。



「………ぅあああ!!!!」


泣き叫びたかった。

俺は男だから、あそこじゃ泣いちゃいけないって、我慢した。



さよなら、水無月。


でも、きっと水無月が好き。


だから想ってることだけは許してくれよ。



お前が師走と付き合うこと、素直に喜んでやる。


でも俺は、ずっと、なにが合っても、水無月を好きだから。



絶対だから。



悲しみも寂しさも全て涙で流れてしまえば、いいのに。


流れてしまえば...いいのに...。


泣いたって、目が腫れるだけで悲しみなんてこれっぽっちも無くならなかった。