舞台全灯、中央に肘掛け付きの、黒い皮のソファーが1つ。

舞台上手より、小太りの男登場。

ソファーに座るなり、ズボンのポケットからハンカチを取り出し、汗を拭いている。


「で、何の話だっけ?ああ、佐伯の話ね。あいつが爪のせいで虐められていたかだって?」


男は短い脚を組み、片方をブラブラと揺らす。


「あーあいつ大袈裟って言うか、プライド高いからね。なんせあの容姿だろ?頭も良かったしモテたよ。実際の所は、少しからかわれたって程度だ。なんか繊細っつーか偏屈だからな。まだ根に持ってたんだな。」


「うん?俺、俺はからかってないよ?見てただけだわ」


男は顔の前で、手を大袈裟に振る。



舞台、暗転。