「先生が自殺をしたですって!…どうして、どうして先生がそんな事をしなくてはならなかったの!?」


女は立ち上がり、手をわなわなと震わせている。


「…僕達にも全くわかりません。近頃は元気がない様に見え、心配はしていましたが…先生は繊細な方だったから、僕達の思いもよらぬ悩みがあったのかもしれません」


男はふう、とため息をひとつついた。


「何よ、それでも貴方一番弟子なの?先生の事、何も分かっていなかったんじゃないの?」


男の表情が一瞬強張り、直ぐに言葉が吐き出された。


「それなら貴女だって!最近は貴女の方が色々な意味で先生と親密だったんじゃないですか?」


女の顔は一気に赤くなる。


「なんですって!不愉快だわ…私がどんな思いであの人の事を…あんたなんかにわかるもんですかっ」


女は椅子に掛けられたハンドバッグをわし、と掴むともの凄い勢いで店を飛び出した。