ほかほかとお風呂を出る。

そして、用意してくれた服を広げると‥



「うわっ」



これ‥着なきゃダメかな?

他にないかな?

んー‥せっかく用意してくれたんだもんね?


着るには、ちょっと勇気のいるような服。


淡い水色の、袖のないワンピース。女の子らしくふりふり付き。

足首まである裾がくすぐったい。



ガチャ‥



「遅いよ、心‥太ーー‥っ……」



ドアを開けてすぐに顔を出したのは、凉さんじゃなくて紺野くんだった。

でも、彼は口元に手を当てて、顔をふぃっと逸らす。



「紺野くん?」



すると、



「心さんとても可愛いですっ!!初めてお目にかかった時から、このお色が似合うと思ってました」



どうやら、この服を選んだのは、凉さんだったみたいです。


それから、なんとなくハイテンションの凉さんとまたお話しながら、この広い家を歩いた。

もうすでに、どこをどう歩いたのか全くわからない。



「ここですよ、心さん」



止まった2人に気づかず、てくてくと歩いていた私は、凉さんに呼び止められた。

目の前には、見たことのある両開きの扉。



「心さんは、千秋様のお部屋でおやすみくださいね」

「一緒‥ですか?」

「んー‥客間もあるのですが……」



凉さんがチラリと紺野くんを見る。

お風呂場から此処まで終始無言だった彼は、凉さんを一瞥すると、私の手を掴んで部屋の中へと入ろうとした。


私は慌てて



「おやすみなさい、凉さんっ!」

「はい、おやすみなさいませ」



にっこりと笑顔で一礼してくれた凉さんは、すぐに扉の向こうへと消えてった。



相変わらず、全部の照明がついていても薄暗いこの部屋。


繋がれたその手は離されることはなくて、逆にきゅっと強くなる。



「心太‥」



とことこと、部屋の真ん中くらいまで来た時、急に立ち止まった彼は、私を呼んだ。



「なに?」



くるっと振り返った彼は、私の頬を細い指先で撫でながら問う。



「心太は、俺のモノ‥だよね?」



暗がりのこの中で、紺色のその瞳が濡れているのは、お風呂上がりだから?



「う‥ん」



その色っぽさに
その妖しさに
その切なさに

何故か、だんだんと緊張していく私。



「じゃあさ、俺のコト‥好き?」