ますかれーど

「おかえりなさいませ」



その言葉を、何回聞いただろう?

古い西洋風のお家。いや、お屋敷。

白い外壁に、たくさんの窓。屋根の色?あー‥屋根なんて見えないわ。

焦げ茶の大きな玄関扉には金の棒が付いていた。

それをカッコいいお姉さまと、運転席から降りてきたスキンヘッドのめちゃくちゃ背の高い、お‥おじさん?が引いて開けてくれた。


広ーい‥

車の中と同じ、象牙色の絨毯。

焦げ茶色の枠や手すりがよく合う、上品な内装。
上を見れば、キラキラと荘厳に輝くシャンデリア。

時代を飛び越えたかと思うくらいに中世のヨーロッパな感じだ。

こーいうの、好き。
お姫さまになれそうだもん。


手を繋いだままの彼は、心持ち足早に真ん中の階段へと向かう。

靴は脱がなくても良いみたい‥だね?


すれ違う度に一礼しながら「おかえりなさいませ」って言われる。

何人いるんだ?ここはホテルかっ!って突っ込みたかった。

そんな言葉に見向きもせず、ただひたすらてくてくと歩いてく彼。



「ねぇ、広いねっ」



私がそう声をかけると、彼は後ろに振り返ってニコッと優しく笑ってみせた。

きゅ‥

さっきから見せるこの優しい笑顔。お腹がきゅーってなる。



「ここ♪」



そう言って立ち止まったのは、大きな両開きの扉の前だった。



「ここが俺の部屋。覚えた?」

「‥え゛」



無理だよっ!!
内装に見惚れるだけで精一杯だったし。

第一、ほ‥方向音痴‥みたいだし私。麗花や玄によくバカにされる。



「心太、もしかして方向音痴だったりする?」

「あー‥うん‥」



すると、クスクスと笑い始めた紺野くんの声は、だんだん大きくなっていく。



「あは‥っはははーーははははは」

「わ、笑いすぎっ」



なんか恥ずかしくって、少しふてくされ気味になった。



「いやっ‥ゴメンゴメン。可愛いなぁと思ってさ」



そう言いながら、ふわりと私の腰を引き寄せた紺野くん。


笑いを落ち着かせる為の息が耳を掠めて‥なんか、背中がゾクゾクとする。



「また1つ、心太のコト知ることができて嬉しいよ♪」



そして、少し身体を離して私の顔を見た彼は「顔まっ赤だよ」ってまた笑う。

楽しいっ♪

私も、一緒になって笑い始めたその時‥

ドタドタドタっと走る足音が近づいて来た。