「せーのっ」

「「「おぉー!」」」

「今日は猫だー」

「魅さんっぽいね」

「可愛いっ♪」



夏も真っ盛りな7月。終業式も終わり、明日からは夏休み。

私は、もう部活にも生徒会にも復帰している。


あれから2ヶ月くらいが経った。

私と紺野くんが一緒に居ることを、まだ認めないって眼差しの子もいるけれど、露骨に態度に出す人はいなくなった。



「魅さんも毎日よく手の込んだの作るねぇ。尊敬だわ」

「へへへ♪」

「俺のも作ってくれないかなぁ‥」



今日は、生徒会の仕事で居残り。

麗花は暇だからって付き合ってくれるんだって。


紺野くんは「俺も暇なんだけどなぁ‥生徒会の仕事かぁ」って言いながら、結局 一緒に居る。



「ねぇ心、魅さんって何ヶ月目だっけ?」

「8ヶ月ー」

「ってことは、9月が予定日なんだ?」



毎日、幼稚園児のみたいに可愛く作ってくれるお弁当をつつきながら、コクコクと頷く。



「心の誕生日と一緒だったりして」

「あーそれ良いかもっ」

「え?心太って9月生まれなの?」



うんって頷く私の横で、ポカンと口を開けた麗花。



「麗花?」

「あんたら‥そんなことも知らんのか」



どこぞのおやじみたいになった麗花。

誕生日の話って、付き合ってたらするものなの?



「心の誕生日は9月15日、コイツの誕生日は9月30日」



これには私たち2人がポカンだった。



「「何で知ってるの?」」



しっかり声が揃ってしまったよ。すると



「僕が教えたの」



愉快そうにお腹を抱えて入ってきたのは、生徒会長だった。



「久しぶりだね、千秋」

「……」



ゆるーく挨拶した生徒会長に対し、恐ろしい程に冷たい視線で返す紺野くん。



「あ、銀崎さんのお弁当 可愛い♪それを食べてる銀崎さんも可愛い」



思わず、箸でつかんで今まさに麗花にあげようとしていたナスを、口に運ぶところだった。



「俺、やっぱ帰るね。ごめんね心太、麗花さん」



そう言った彼は、食べかけのパンとリュックをひっつかんで足早に教室を出て行った。



「あ、紺野くんっ」



声をかけたものの、どうして良いのかわからずに突っ立ったままの私。

伸ばしたままの手。

ポンっと後ろから叩かれた両肩。



「行ってあげて‥」