こんな麗花‥見たことない。

いつもクールで、いつも優しい麗花が壊れたように声をあげて笑うなんて。



「ーーふふ‥はー」



やっと笑い終えた麗花は、スッと顔をあげ、つかつかと私の前まで来た。


そして、透き通るその紅茶色の瞳をふわっと細めて、私の頭を撫でる。



「これで良いのね?」



優しい、いつもの麗花がそこに居た。



「ん」



私は、麗花の瞳を真っ直ぐに見つめながら頷く。



「ふふ。心もついに彼氏持ちかぁ~」



私の頭をぐしぐしと揺らしながら、ニンマリと笑ってる麗花。

でも‥なんだろこの感じ。


少しだけ、麗花の笑顔に違和感を覚えたような気がしたんだ‥。



「紺野 千秋くん」



麗花は彼に背を向けたまま、私を見たまま、彼の名前を呼ぶ。



「はい」



彼は微笑みを絶やさぬまま、私たちを優しい瞳で見ていた。



「よろしくね」

「はい」



なんだろ。

護るとか護られるとか、そんなのどうでも良かった。


第一、私は護られるようなガラじゃないし。

自分の身くらい、自分で護れるし。



でも、この2人の中で何かが繋がったみたい。

私にはそれが何なのか、解らないけれども。




季節が変わるように、私のココロも変わってゆく。


砕かれて晒し者になった“ワタシ”


もう、新しい仮面を被る必要はない?



私は、彼のコトを何も知らないの。


でも、

確実に“ワタシ”への侵入を許してしまっている。


そうされたくないから、仮面を被っていたはずなのにーー‥


それは‥何故?



ふっとよぎるは玄の顔。

いつも“ワタシ”を映してくれる、麗花と同じ透明な光を湛える紅茶色の瞳。



ーーーー‥何故?



「あ、ねぇ麗花。このこと玄にはーー‥」

「分かってる。兄貴には黙ってたほうが良いね」



ポンポンと頭を叩くその仕草‥玄もよくやる。




「……心、そのクロトってさーー‥」

「ほら心!チャイム鳴るよ」

「あ、うん」



少し早めに来たはずだったのに、時計を見ればあと2分で予鈴が鳴る。



「えと、なんだっけ?」

「いや、いい。また、昼休みに来るね」



そう言った彼は、その細い指先を私の頬に滑らせ、顎を引き上げた。




ちゅっ




ーーーーー‥え゙。