「こ‥ここから入ってきちゃダメだからねっ」
この家のお風呂はかなり大きい。10人なんて余裕で一緒に入れるくらい広いんだ。
私はその広い洗い場に、シャンプーで線を引いた。
「おい‥そっちにしかシャワーねえんだけど」
外の気温が低いのか、浴室はもくもくと曇っている。
あんまり見えないんだけど、私は大きなバスタオルをぐるぐる巻いた。
対してーー‥
「あんた‥っタオルくらい巻きなさいよっ」
「やだね。めんどくせ」
このやり取りを何度したことか。
「昔はよく一緒に入ってたじゃねえかよ」
「今と昔じゃ全然ちがーうっ」
目に水が入らないようにそそくさと頭を洗い終えた私は、身体をどうしようか悩む。すると‥
「ひぁ‥っ」
クンっと背中側のタオルが引っ張られて、お風呂場の蒸気が身体をすぅ‥と撫でた。
タオルを取られた反動で振り向いてしまった私の蒼は、しっかりと紅茶色に捕らえられてしまい、固まる。
「……」
「……」
「……」
「……」
紅茶色の瞳は、驚いているみたいにじっ‥と私を見ていた。
私の顔が、だんだんと熱くなってくのが分かる。お腹がキュッと苦しくて、涙が出そうになる。
「お前‥」
ゆっくりと伸びてきた手から逃げるように、私はお湯の中に身を隠そうとした。したんだけど‥
「……お湯、半分しかない」
へたりと座って入っても、胸の下くらいまでしかないお湯。
「さっき捻ったばっかなんだから、溜まってるわけねーだろ。ばーか」
その罵声に、キッと睨みつけようとすればーー‥
「っ、なんで入ってくるのよ!!」
「だって寒いし」
「あっちいけ!」
「誰かがシャワー貸してくんねえから冷えた」
大きな窓があるこの浴室。朝焼けが橙色に輝いて、私たちを強く照らす。
ポチャンと湯船に入ってきたこいつがだんだんと近づいてくる度に、おかしいんじゃないかってくらいうるさく波打つ私の心臓。
「なぁ、」
「なによっ」
膝を三角に折って心臓を押さえる。
「お前さ、」
「何よ」
もう近づかないで。私、おかしくなっちゃうよ。
「‥俺のことキライ?」
「え?」
意外な言葉に少しだけ振り返れば、どことなく悲しそうに微笑む玄がいた。
この家のお風呂はかなり大きい。10人なんて余裕で一緒に入れるくらい広いんだ。
私はその広い洗い場に、シャンプーで線を引いた。
「おい‥そっちにしかシャワーねえんだけど」
外の気温が低いのか、浴室はもくもくと曇っている。
あんまり見えないんだけど、私は大きなバスタオルをぐるぐる巻いた。
対してーー‥
「あんた‥っタオルくらい巻きなさいよっ」
「やだね。めんどくせ」
このやり取りを何度したことか。
「昔はよく一緒に入ってたじゃねえかよ」
「今と昔じゃ全然ちがーうっ」
目に水が入らないようにそそくさと頭を洗い終えた私は、身体をどうしようか悩む。すると‥
「ひぁ‥っ」
クンっと背中側のタオルが引っ張られて、お風呂場の蒸気が身体をすぅ‥と撫でた。
タオルを取られた反動で振り向いてしまった私の蒼は、しっかりと紅茶色に捕らえられてしまい、固まる。
「……」
「……」
「……」
「……」
紅茶色の瞳は、驚いているみたいにじっ‥と私を見ていた。
私の顔が、だんだんと熱くなってくのが分かる。お腹がキュッと苦しくて、涙が出そうになる。
「お前‥」
ゆっくりと伸びてきた手から逃げるように、私はお湯の中に身を隠そうとした。したんだけど‥
「……お湯、半分しかない」
へたりと座って入っても、胸の下くらいまでしかないお湯。
「さっき捻ったばっかなんだから、溜まってるわけねーだろ。ばーか」
その罵声に、キッと睨みつけようとすればーー‥
「っ、なんで入ってくるのよ!!」
「だって寒いし」
「あっちいけ!」
「誰かがシャワー貸してくんねえから冷えた」
大きな窓があるこの浴室。朝焼けが橙色に輝いて、私たちを強く照らす。
ポチャンと湯船に入ってきたこいつがだんだんと近づいてくる度に、おかしいんじゃないかってくらいうるさく波打つ私の心臓。
「なぁ、」
「なによっ」
膝を三角に折って心臓を押さえる。
「お前さ、」
「何よ」
もう近づかないで。私、おかしくなっちゃうよ。
「‥俺のことキライ?」
「え?」
意外な言葉に少しだけ振り返れば、どことなく悲しそうに微笑む玄がいた。

