独りぼっちで残された中庭に、麗花がいつの間にか隣に居て。

いろいろと報告をして、麗花はかなりの怒りのオーラを放ちながら去っていった。


話したことで少し気が楽になったのか、私はウトウトとし始める。


夢を‥見ていたと思う。

それは、小さな玄が泣いている夢。


私はただ、背中をくっつけて一緒に膝を抱えることしか出来なかった。


何も‥出来なかった。


玄は、私を見つけてくれる。昔から、その紅茶色の瞳に見つめられるだけでドキドキしてた。


それは、“本物の私”が見透かされているようで、苦しかった。


でも、違ったんだね。


私、きっと、あの時から玄のこと好きだったんだ。

ほらね。遅すぎた自覚は、後悔を生むの。



ーーー触れた温もりに、意識が戻ってきた。

タバコの匂いと、お酒の匂いが嫌。目を開けてコロンと見上げれば‥



「あれ?玄‥?居たの?」



これは、夢の続き‥?



「お前それ‥結構ヘコむっつったろ?」



あぁ‥昔のやりとり。
きっと、夢なんだ。

コロンとまた向きを変えたら、玄の匂いがした。タバコじゃない、お酒じゃない、玄の匂い‥



「まだ寝んのかよ」

「うん」

「あっそ」



この温もりも、幻?



「玄、あったかい‥」



夢なら、言えるよね?
どんな大胆なことだって、言って良いんだよね?



「玄‥」

「あ?」

「私ね、頑張るから」

「あ?」



こうやってぶっきらぼうに返事をするの、リアルだなあ‥ふふ。



「イイオンナになって、いつか玄に女の子として見てもらえるように」



ほら、全部言っちゃえ。



「自信がついたら、もう1回言うから。覚悟しといてね」



言っちゃった。これが、本人の前で言えたら良いのにね。



「‥言えよ」



あれ?



「今‥もう1回言えよ」



サラリと髪を撫でる感触‥。鼓膜を震わす低い声。目を開けて、起き上がってみてみれば‥



「玄?」



本物‥?



「もう1回‥聞きてぇんだ」



うそ‥本物だ。

え?なんで?なんでここに居るの?

しかも、『もう一回』ってーー‥玄?


私は玄の膝に手を置き、その存在を確かめた。


そして、もう一回、伝えたんだ。


私を抱きしめた玄は、泣いてた。

空も、玄と同じ気持ちなのかな?