「せんぱぁーい」

「お疲れ様ですっ」

「お、2人ともお疲れ」

「今日は部活に顔出されます?」

「んー‥難しいかな? 生徒会の仕事と、ほら例のおやじの」

「あぁ! 先輩くらいのもんですよ?」

「そーですよぉ。あの紫藤(シドウ)先生を“おやじ”呼ばわりできるなんて」

「そうなの? あ、そだ。次に私が部活に参加する時までに、このスコアを1枚追加ね」

「「えぇーっ」」

「ふふ。よろしく」

「はぁい」

「先輩も無理しないで、たまには気晴らししてくださいね」

「はいはい」

「じゃ、先輩!」

「また明日っ」

「ん。頑張れ~」

「「はーい!!」」



元気な返事を残して走り去っていく可愛い後輩たち。


私は‥

“後輩想いの面倒見の良い先輩”


その押し戸を、ため息を殺しながら開ける。



「あ、銀崎(ギンザキ)さん」

「あ‥お疲れ様です。会長」

「終わったんだ?」

「はい。この書類を渡しておきますね」

「いつもありがとう。銀崎さんが居ると本当に助かるよ」

「いえ、仕事ですから。では」

「銀崎さん」

「はい?」

「たまには‥息抜きしてね?」

「っ、はい‥失礼します」



生徒会の仕事を、確実に素早くこなす。


私は‥

“とても優秀な生徒会の副会長”


目の前のドアを、形式的に3度ノックする。



「失礼します」

「お、来たか銀崎よ」

「またパソコンへの打ち込みですか?」

「おぅ」

「自分でやらなきゃ、いつまで経っても遅いままですよ?」

「立ってるものは、“生徒”でも使えってな」

「はぁ‥それ、使うとこ間違ってます」

「あははははっ、知ってる」

「終わりましたよ」

「早いなっ!」

「もう慣れました」

「お前さぁ、」

「はい?」

「なんで敬語?」

「学校では、先生と生徒ですから」

「あっそ」

「当たり前です」

「お前さぁ、」

「もう帰って良いですか?」

「もっと肩のチカラ抜けば?」

「--‥帰ります」



静かに、ドアを閉めた。それにもたれながら、吐きそうになるため息をまた殺せば。



「わかってるよ‥」



漏れたのは、そんな言葉。


私は‥

“何でもできる理想の生徒”




ねぇ?

私は‥

----‥どこ?