吐き出す息が、空へと溶けてゆく。

まるで、キレイな天蓋に白いベールをかけたかのように。その煙が空を塞ぎ、私の瞳には霞んで見えた。



「‥っく」



流れる涙も、漏れる嗚咽も、止む気配はない。

胸が苦しい。
締め付けられて、握りつぶされてしまいそう。



「ひっく‥っうぅ‥」



泣いたってどうにもならないことくらい解ってる。


告白してフラれた。
ただ、それだけのこと。



ただーー‥それだけのこと。




その“それだけのこと”が、こんなにも痛いだなんて。



キィィ‥ン、ジュ‥

あの人が、2本目のタバコに火をつける音がした。


何も言わず、私が泣きやむのを待ってるんだ。

いつもそう。


私が大泣きした時は、いつも側で泣きやむのを待っていてくれた。

その、温かい胸を貸しながらーー‥



「うぁっ‥っく、ひぃっく」



泣きやまないよ。
泣きやめないよ。


その胸には、もう2度とすがることはないだろう。



「っく‥ひっく」



好きだよ。大好きだよ。

こんなに、こんなに膨らんでいただなんて。



届かない想いは、

赤く、朱く、紅く

ーーー‥爆ぜゆく。



灼熱の満月は、怒りの色。白いベールを纏って壁を作る。

瞬く星は、鋭く射抜く光。打ち込んでも尚、その攻撃姿勢を変えることはない。


ほらね。

遅すぎた自覚は後悔を生むの。


もっと早くに自覚していれば、誰も傷つけなくて済んだのかもしれないのにね。



私が泣くだなんて、間違っているでしょう?


保身の為に仮面を被って、振り回して、傷つけてーー‥今度は優しかったはずのこの人を、こんな瞳にさせて。


最低だよ。



私‥最低だ。




でも、決めたの。

彼が笑って背中を押してくれたんだ。

あの人の元へ歩けって、そう押し出してくれたんだ。



涙を拭って。
鼻水を拭いて。

ーー‥前を見て。



スカートを握りしめて、潰れそうな胸を押さえて。





ほら‥



『行っておいで』






「っく‥私、」

「あ?」

「それでも、玄が好き」