外はさっきよりも風が冷たくて、カサカサと銀杏や紅葉の葉を運んでいた。


レンガの道をコツコツと鳴らしながら進み、空一面に顔を出す星たちの天蓋が、それに合わせて瞬いている。



キレイな夜。

そして、

決意の夜。



ココロがドクドクと鳴る度に、靴擦れがズキズキとしてる。



「ねぇ‥」



赤いベンチの背もたれに、手をつけながら立っていたその人。

辺りはとても静かで、風景の音しかしない。



「何か用か?」



振り向かずに、前の花壇を眺めながら発したその低い声は、私の胸をギュッと締め付ける。



「話したいことが‥あるの」



苦しく鳴く胸を、固く握った手で押さえる。



「あの、私‥」

「別れたんだろ?」

「‥え?」

「見てたよ」



ゆっくりと私の方へ向けた身体。

その瞳と表情は、仮面に隠れてしまって見えない。



「また次に良い男が現れるって。心配すんなよ」



ぶっきらぼうだけど、いつもより明るいその言葉。

ズキンと、胸が鳴った。



「私は‥」

「お前まだ高2だろ?こっから先、どんだけあると思ってんだよ」

「違う。私はっ」

「次に期待しろよ。次こそは逢えるかもしんねぇよ?運命の相手ってヤツに」



クツクツと笑うこの人は、私の言葉をことごとく遮る。



「ねぇ、聞いて‥っ」

「運命とか言っちまったよ。ガラじゃねえよな」

「ねぇってばっ」

「元気出せって、な?」

「私の話を聞いてっ!玄っ!!」



私の声が響く。

周りの木々も花々もそれに驚いたのか、スッと揺れることを止めた。

まるで、時の流れが私たち2人以外、止まってしまったかのように。



「‥なんだよ」



少し怒ったような口調になったその人は、背もたれに腰を預け、腕を組んで私を正面に見る。



「私‥」



想いを告げることが、こんなに苦しいだなんて。






「私、玄が好きなのっ」






告げた想い。


止まっていた時は、ゆっくりと動き出す。





あの人の、

笑い声と共にーー‥