恋人になるってなんだろう?

別れるって、ナニ?


ワタシ、好きだったよ?
彼のコト、好きだった。


ううん。
好きになり始めてたんだ。


身近に居る人以外で、初めて“私”を見つけてくれた人だった。

“私”を外に出してくれた人だった。


彼が仮面を砕いてくれたから、いつも顔に描いていただけの笑顔は、だんだんと本物になっていった。



だから……っ



ーー‥そう。


だから、お母さんとも和解できた。お父さんが不器用な人なんだと理解ができた。


私の歯車を変えたのは彼。彼が居なかったら、今の“私”は居ないの。





『心太♪』

『軽い気持ちなんかじゃないです』

『心は、俺が護ります』

『俺を見てよっ』





淀みなく真っ直ぐだった。

彼の、

視線も
言葉も
ココロも

真っ直ぐだった。




そんな彼を‥




ーー‥ウラギルノ?




また私は、彼を傷つけるの?




そんなことーー‥っ






ーーーーーー‥





「ちょっと意地悪だったかな?」



太陽が眠りにつくの、早くなったね。

橙を帯びた光が窓を射し、部屋を染め始めていた。



「でも、決めるのは君だから」



ワタシは、その光に暖かさを感じることが出来なかった。


ぎゅっと握ったココアの缶は、もう冷たくて。

肌を滑る風も、とても冷たくて。



「ただ‥早くしないと、どちらも離れてしまうかもね?」



ズキンとドキンを繰り返していた左胸は、今や、冷たく静かに波を打つ。


頬を伝うそれは、いつの間にか枯れ始めていた。


それは、ワタシが1つの答えを出したから。






「会長?」

「ん?」

「心配ないですよ♪」

「ーー‥そ?」



切れ長の瞳を弓なりに細めて、その薄い唇を三日月のように上げた会長。



「もうこんな時間か。あと、よろしくね?」

「はい♪」




東の空に昇った月は八分月。

闇に潜んだその部分。



それは、会長のように、壊れた人形のように、




ーー‥笑ってる。