勢いよく角を曲がってこちらを向いたその子は、あたし達3人が、突っ立って待ってることに気がついた。


残酷な月の光の所為で、影になってしまったその子の表情を‥あたしは、伺い知ることができない。


ぼやけて、ゆらゆらする視界の中で、少しずつ、少しずつ近づいてくるその子は、

ちょうど、お互いの顔が見えるくらいのところまで来ると、ピタリとその足を止めた。





ーー‥悟ったんだ。





この子は、あたし達の表情だけで解ってしまったんだ。



でも‥でもね?

この子は、



泣くことも、

叫ぶことも、

すがることも、


何も……何もしなかった。



ただただ立ち尽くして‥その顔は、人形のように何も映さない。



あたし達が何を言おうと、どんな言葉を伝えようと、それらがこの子のココロに流れることはない。




この子のココロは、この時、壊れてしまったんだ。





ココロに咲いた、見えない傷。

赤く、紅く、朱く、

ーーーー‥狂い咲く。





仮面を被ることすら忘れてしまった、その蒼い瞳の人形は、ただ‥ただ虚無だけを見つめている。



何日も、何日も、何日も、何日も……。





何日も……






ーーーーーーーー‥






魅さん?目を開けて?

ーーっお願いだよ!


そしたらね、あの子も起きる気がするの。



あなたを、待ってるんだよ。きっと。



泣くのは周りばかり。

叫ぶのは周りばかり。

祈るのすら、周りばかりなの。




でも、それでも、あの子の右手にはずっと何かが握られている。


そこだけ、ずっと緩まずに入っている力。




それが、あの子の希望‥なのかもしれない。

それが、あの子の祈りの姿。



あの子のココロは、
恐ろしい程の凪。

そこに、波紋を描くことが出来ない。


あたしには‥出来ないよ。





なんでーーっ


ーー‥なんで……