独りだけだと思っていたこの部屋に、いきなり低めの声が響いた。



「見つかったか?」

「何で‥ここに‥」

「お前、魅さんがどこに運ばれたのか知らねぇだろ?」

「あ‥」

「後ろに乗せてやるから、着替えてこい」


そう言ったその人は、ヘルメットを2つ、掲げてみせた。



「え?」

「スカートじゃバイクに乗れねぇだろ?早くしろっ!」

「あ、うんっ!」



壁にもたれて腕を組むのはいつもの格好。

変わらないその姿に、

少しだけ、ほんの少しだけ‥落ち着いた自分がいる。