「お前をそんな顔にしてるのは、あいつか?それとも‥俺なのか?」



静かにそう問うたこのヒトの手は、昔のように温かい。

でも、ワタシの‥知らない匂い。



雲の上の下弦の三日月。
ワタシ、下弦の月ってキライなの。


だって、闇に飲まれてゆくでしょう?


対等で対照だったはずの、光と闇。

飲まれては照らして
照らしては飲まれて。


もし闇と闇ならば、どう‥作用する?



「‥ねぇ、言ってる意味がよく分かんないんだけど?」



動揺なんて微塵も見せたくない。
沸き上がりそうな感情にフタをして、偽りの色を作る。



「お前‥」



その表情は、なんの感情?ワタシの中には見当たらない。



「なんなんだよ‥っ」



意味が分かんない。



「なんなんだよお前っ」


あなたは怒ってるの?



「俺のナカに入ってくんな‥っ」



頬からスルリと下りた手は、ワタシの首筋を掴んだ。



「あいつに好きだって言ったんじゃねぇのかよ」


その長い指先の



「‥っんでーー‥なんであいつのしるしがねぇんだよ」



爪が立って



「今日はお前の誕生日だろ‥っ」



苦しくて



「上手くいってんじゃねぇのかよっ!!」



ーー‥傷になる。







ーーーーーーーー‥







下弦の月はキライなの。

だって、ただ闇に飲まれてゆくだけでしょう?


白く輝く下弦の月は

まるで、壊れた人形のように

口の端を上げながら

ケタケタと笑って空から眺めてる。



嫌な予感でいっぱいだ。