『ねぇねぇ。
君さ、もしかして
水泳部の武田先生のムスメ?』
突然、声のしたほうを振り向く。
ダボッと制服を着くずして、ポケットに手をつっこんだ男の子が立っていた。
キラキラ光る黄色い髪が印象的な男の子だった。
「そうですけど…。
なにか?
まっ、苗字はちがいますけど…」
『えっ!?そうなの?』
一瞬、驚いた顔をしたけど、それ以上は何も聞いてこなかった。
わたしのお父さんは、
わたしが3年間通うことになるこの高校で、水泳部の監督をしている。
『俺は杉本 哲斗。
俺さ、ずっと水泳やってんの。
元S中学水泳部の武田先生って言ったら、すげー有名だったよな?
県大会とかバンバン出場させちゃうの。
スゲーよな!
俺もS中に行きたかったぜ』
「はぁ、そうですか。
じゃあ…」
軽くおじぎをしてその場を去ろうとする。
『ちょっと!待てって!!』
グイッ!!!
突然、ものすごい力で腕を引かれて、校舎に向かう人の波から外れる。

