「はい。栄養満点の食事を取らせています。
  しかし、清來は好き嫌いが激しくあんまり食べないんです。
  でも、大丈夫ですよ。ね、清來。」
私は頷くしかなかった。
前に真実を言ったことがある。
先生が帰った後、母は私をこれでもかというくらい、殴り挙句の果てに服を切り裂き、外で2~3日放置されたことがある。
それもすごく寒い冬の夜。
 「そうですか。それを聞いて安心しました。
  では、私はこれで。」
母の話を聞いた先生が帰る支度をして玄関の方へ歩いていく。
(先生、行かないで!)
私は呼び止めたかったが、先生は帰ってしまった。

それから、3日後。

中学校から帰ると、いつもの男が玄関の前で、何か呟いていた。
しばらくして扉が開き、男が中へと入っていった。
私も家の中に入ろうとした。
しかし、扉が開かない。
 「お母さん、開けて。清來だよ。」
すると、中から声がした。
 「誰?この家には合言葉がないと入れないよ。合言葉は?」
合言葉?そんなの知らないし、聞いたこともない。
でも、今の声は確かに母の声だ。