私は立ち上がり踵を返し、その場を走り去った。
いつまでもここにいたら、バレてしまうかもしれない。
ここは城下街だから、私を知っている人もいるだろう。
とりあえず、どこかに身を隠さなければ…。
でも一体どこへ?
「おい!お前っ!」
急に呼び止められ、足を止めると、先程の酔っ払いがいた。
その顔は険しい。
「お前、なぜ城で起きていたことを知っていた!?」
「……あなたたちに言う必要はないわ」
「お前、まさか……」
私は振り切るように走りだした。
後ろで酔っ払いの男が何やら叫んでいる。
途切れ途切れに聞こえる声は、どうやらあの女が何か知っているっといった内容だ。
どうしよう…。
私はとっさに物陰に身を隠した。
後ろから追って来たと思われる人々が通りすぎて走り去る音が聞こえる。