私の準備が整うと、カイルは頷き踵を帰した。
そのまま外へ出ようとすると、おもむろにお頭が声をかけてくる。
まだ何かあるのかと少し身構えた。すると。
「小僧。お前は?」
お頭は私を見ている。
小僧って私のこと?
カイルも私を見てるし、やっぱり私のことか。
ひとり納得すると、お頭は私を見据えたまま、聞いてきた。
「お前は何かするのか?」
“何”か。
それはこの国に対してなのか。
だとすると、私は。
私は何が出来るのか。少し思いを巡らせるが、答えはすぐに出た。
「……今は生きる」
「は?」
「生きて……チャンスを待つ」
「チャンス?」
私の答えにお頭はポカンとした顔で見ていた。それにニコッと笑顔を返した。
「決まってるじゃん」
そう。
ずっと思っていた。
城を出て、髪を切ってから。私は。
生きてこの国をこの手で奪い返す。
「エルシールを取り戻すチャンス」
アッサリと言う私に、お頭はブッと吹き出した。
「ガキに何ができるっ」
「じゃぁ、あなたたちに何ができるんだ!?」
頭の言葉に被せるように私は言い放つとその勢いにお頭は言葉を詰まらせる。
私は鋭く彼らを見渡した。
「やらなきゃわからない。いつになるかわからないけど、この手でこの国を救う。そう決めたんだ!だから、そのために俺はサルエルを倒す。絶対にこの国は渡さない」
私の勢いに押されるように頭は一歩下がった。