自分達の無力さに荒れて、酒場で飲み歩いていたようだ。
こんなことをしてしまったのも、半分ヤケクソな気持ちになっていたのだろう。
「だからって、ここで何か問題起こしても何の得にもならない。下手すれば暴力沙汰で捕まりかねない。そうだろ?」
カイルの凛とした声に頭や男どもは返す言葉もなくうなだれたように下を向いている。
私はチラッとカイルを見上げた。
不思議な男だと思う。
この見た目にも屈強な男たちを力も使わず、一声で大人しくさせる。
いくら事実を話しているだけだからといって、囲まれたこの状況に怯む様子など微塵もないのだから。
カイルはどんな男なんだろう。
私はまじまじとカイルの顔を見つめて、少しこの男に興味が湧いた。
そんな私の視線に気がついたのか、カイルがフッとこちらを見て笑顔で頷いた。
「どうすりゃぁいいのさ……」
呟くような吐き出すような声がして見ると、お頭が悔しそうに拳を握りながらこちらを睨んでいた。



