カイルも腰の剣を抜くのかと思いきや、彼らを見て静かに言った。


「こんなことして何になるんだ?」
「なぁにぃ~!?テメェに関係ねぇだろぉ!」


怒鳴るお頭にカイルは冷たい視線を送る。


「お前がやっているのはただの振られた腹いせだけじゃぁないだろう?」
「なっ!?」
「本職は漁師。でも今は仕事がない。そうだろ?」


そう言われると、お頭もその周りの男たちも言葉に詰まったように黙り込む。


「サルドアに、職を奪われたんじゃないか?」

カイルの言葉に私も驚く。
サルドアに職を奪われたってどういうこと?
お頭を振り返ると、悔しそうに拳を握っていた。


「聞いたんだ。貴方が追い出されたあの店の女性に。国がサルドアの手に落ちる前に、漁場である領土を侵略されたと」
「……」


お頭はギリッと歯を食い縛っている。
本当のようだった。
カイルの話しによると、サルドアは城を攻める前日に小隊で漁場を襲い、漁師を拘束。
エルシールの生活源のひとつである水辺を強奪していたのだ。
お頭はガクッとうなだれた。


「サルドアが、俺様達の仕事を奪ったんだ」


絞り出すように声をだす。悔しさが滲みでていた。お頭の言葉に続けるように周りの男達も話し出す。


「あいつら、武器を持ってるから逆らえなくて」
「役人に知らせようにも、拘束が解かれたら城が落ちてた」
「家族に危害を加えさせないようにするには、俺らが引き上げるしかなくて」


皆、武力には勝てなかったようだ。