狙われし王女と秘密の騎士



そういえば……、と思い出す。


「カイル、どうしているかな」


そろそろ私が居なくなったことに気がついてもいいだろう。
急に居なくなったんだから驚いているはずだ。


……いや、まだ遊んでるのかな。

それとも厄介者がいなくなってせいせいしてるとか?
そう思うと胸がチクンとする。


「それは、けっこう淋しいな……」


自分の考えに苦笑する。でもあり得るのだ。私達は出会って日が浅い。よく考えれば、お互いのこと、深くは知らないのだ。
カイルがこないことは、ある意味当然かと言える。


「私はバカだなぁ。もっと上手く交渉すれば良かったわ」


自分で何とかしなければと思ったら自分のしたことに舌打ちをしたくなった。
逆恨みしている相手に何を言っても無駄かもしれないけど、もっと上手く話を持って行けば良かったな。

何とか明日までに何か逃げ出す策を考えないと。

でも何も浮かばない。
独りじゃぁ、何も。その非力さに涙が滲む。
今、私は独りなんだと強烈に感じた。
王宮でもない。ルカもお付きも護衛も、いままで側に当然のようにいた人はいない。
独りでなんとかしなければならないのだ。
王女として生まれ、何でも与えられてきたが、独りとはこんなにも孤独なのだと知る。
自分がどれだけ恵まれていたか痛感した。


「本当、私はバカだ……」


自嘲気味に呟くと、一粒だけポトンと涙が床に落ちた。