狙われし王女と秘密の騎士



「やりたければやればいい。しかし、貴方は必ず後悔する」


そう、必ず。私に手を出せば必ず後悔する。
私の目線、言葉の力強さにお頭は顔を強張らせて動揺していた。
何かに怯んだように。


「…っ。な、なら明日!存分にいたぶってから殺してやるよっ!」


そう言い捨て、他の男達を引き連れて短剣とともに部屋から出ていった。
小屋には誰も残らず、途端に部屋の中は静まりかえる。
戻ってくる様子がないとわかると、私は一気に溜め息をついた。


「ハァァ~……」


たった一つのため息がやたら大きく聞こえる。 だいぶ緊張していたようだ。
お頭には余裕そうに、なるべく怖がらないよう振る舞ったが実は手のひらは汗でびっしょりだ。
お頭達がどんな人物かなんてまだハッキリとわからない。
女とバレて襲われることだって考えられる。
バッサリと殺されるかもしれない。
油断は出来ないが、この状況ではどうにも出来なかった。

しかし、参ったなぁ。どうしよう、と唇を噛む。
短剣は何とかして取り戻したいが。
正体をばらす?
それは尚更良くないような気がした。
だって、国の大事に国王の娘が逃亡しているのだ。
下手したらその責任を問われて、それこそ生きて帰れないかもしれない。