狙われし王女と秘密の騎士


口調も態度も船乗りの男と言う感じはあるが、やはりこの手のことには素人、初めてなのではないだろうか。


「…ねぇ?」
「あぁん!?」
「わた……じゃない。もしかして俺のこと、捕まえたはいいけど、どうしたらいいか戸惑ってない?」
「なっっっ!?何を言い出すんだ!テメェ!」



お頭はビクッとして顔赤く必死に怒鳴っている。
なんだ。図星のようだ。
それはそうだよね、と納得する。ただの船乗りだった男がこういった誘拐に慣れていたらそれこそ大問題だ。
きっと、振られた腹いせに誘拐して縛ったはいいが、それからどうしていいのかわからなかったのだろう。
勢いでここまでしたが、実際はいたぶる勇気もない。
ダラダラと話ながらどうしたものかと考えているといったところだろう。


「勢いで俺をさらってしまったってとこかな?」
「黙れ!ガキが!」


完全に怒ったお頭にグイッっと強く胸倉を掴まれる。
く、苦しい……。
思わず顔をしかめる。


「そんなに早く死にてぇなら死なせてやるよ!」


真正面で低く吐き出すように言葉に怒気を含ませる。
しかし私も負けてはいなかった。


「殺すの?」


私は頭を正面から見据え、ゆっくりと聞いた。
お頭の目線にも負けないくらい、まっすぐと目を見つめて再度尋ねる。


「私を殺すのか?」
「……っ!?」


頭は一瞬怯んだ表情を見せた。