「この剣は立派だなぁ。売ったらさぞかしいい金になるだろぉよ」
ニヤニヤと笑う顔に私は焦りがにじむ。
売られてしまうのは困る。なんとか取り戻したいが縛られているせいで何も出来ない。
しかし、幸いなことにお頭や他の男たちは柄の裏に刻まれた王家の紋章には気がついていないようだ。
バレたらややこしくなる。
お父様からの大切な短剣だ。一刻も早く取り返さないと。
「それは大切なものなんだ。返してほしい」
駄目とわかっているが再度頭を下げてお頭に頼み込む。
そんな姿に優越感を感じたのか、さらにニヤニヤと笑みを深くする。
「嫌だといったら?」
「そんなっ!」
こちらが手も足も出ないとわかってて、嫌らしくそう言う。
そう言われると、今の私は唇を噛むしかない。
悔しさに、正面からお頭を睨みつける。
それが気に入らなかったのか、お頭は表情を変えてムッとしたように声を上げた。
「今度は睨むのか。テメェ、少しは自分の命の危険を感じろよ!」
「感じてるよっ」
「なら少しはビビれよなぁ!ムカつくなぁ!」
お頭は焦れたように叫ぶ。
そんな様子に、何だかおかしいと思った。
お頭たちは、私を捕まえた割には直ぐに手は出さない。今なら何でも出来る筈なのに、いたぶる所か指一本触れようとする訳でもない。
何がしたいんだろう、この人は。



