狙われし王女と秘密の騎士



お頭と呼ばれたその振られた男は、嫌らしくニタリと笑った。


「泥棒じゃぁねぇよ。それに俺様の本職は船乗りだからな」
「は?船乗り?この国は海はないけど。海賊か何か?」
「あ、いや、格好よく言ってますが、要は川釣りの漁業です」


私を連れ去った男がお頭の前だからか、急に腰が低くなり、丁寧に説明をしてくる。
それにお頭はチッと舌打ちする。


「船乗りには変わりねぇだろぉ!!」
「はい!お頭!」


どっちでもいい。つまり、この国は大きい川や湖があるからソコラの船乗りってことだろう。
そんなことより、私はお頭の手にある短剣が気になって仕方ない。
お頭に短剣の紋章に気がつかれたらおしまいだ。
しかし、お頭はそんなものに気がつく様子もなく、話を続ける。


「俺様はなぁ、仕事もなくして女にも振られたんだ!ムシャクシャしてんだよぉ!」
「仕事がない?」
「チッ。テメェみたいなお坊ちゃんにはわかるめぇ」
「なぜ仕事がない?戦争に行ったわけではないのだろう?」


船乗りは数が多くない。だから志願兵には含まれなかったと記憶していた。
なのに仕事がないとはどういうことなのだろうか。
驚く私をチラリと見て大きくため息をつく。


「テメェには関係ねぇよ。っーか、自分の心配しろよ!」


私の短剣を目の前にかざす。