入ってきたのは厳つい体の大きな男。
この男は……。
「えっと……」
そう。その男は…………。
「えっと、あの………」
……………あれ?
愛想笑いを浮かべて首を傾げる私に目の前のその男は青筋を立てプルプルと怒りを顕にする。
「き、貴様……。まさか俺様を忘れたとかいうんじゃぁねぇだろ~なぁ」
相手は私をよく知っているようだった。
サルドアの者でもなさそうだし。
困った挙げ句、私は誤魔化そうと笑顔を見せた。
「あ、ハハ…。いや、覚えてるよ。えっと……… 久しぶり~」
「久しくねぇよ!!昼間、会ったばかりじゃねぇかぁ!!」
真っ赤な顔して怒鳴る男にあっ、と記憶が呼び戻される。
思い出した!
「あぁ~、ハイハイ。昼間の酒場の!振られていた男!」
「ぐっ!テメェ~!!」
一番触れられたくないことだったようで、男は拳を握りしめ怒りでさらに震えている。
だってねぇ。怒ったって忘れてたんだもん。
と心の中で弁解する。
「で、どうしてこんなことするの?」
「昼間に会ってから貴様の顔が忘れられなくてなぁ!」
「いやぁ、気持ちは嬉しいけど……」
タイプじゃない。
私がふざけて困る表情をすると、男はバンっと壁を叩いた。
「そうじゃぁねぇぇ!」
「あ、やっぱり?」
「貴様!俺様を馬鹿にしやがって!テメェみたいなお坊ちゃん顔の整った奴が1番ムカつくんだよっ!」



