静かに聞くナチさんと一度目を会わせるが、私は再びそらした。
目を見れない。
しかし、先を促すように見つめてくるためモゴモゴとしながらも言葉を続けた。
「だって、国が戦争をしなければ、こんなことにはならなかったのだから」
「そうね」
ナチさんはキッパリと言った。
思わず顔を上げ、ナチさんを見つめる。
しかし、ナチさんは笑っていた。
「でもね、私は陛下を怨んでなんかいないのよ。だって陛下は……」
ナチさんが言いかけたとき、風呂から上がったバルが部屋に飛び込んできた。
勢いよくナチさんに抱きつき、話はそこで中断してしまった。
だって。
陛下は、お父様はどうしたというのだろう。
私はそれを知らない。
何も政は知らなかった。
それが、情けなく悔しいと思う。
カイルとバルが風呂から出たあと、私も入り、そのまま外で風にあたる。
風呂から出て、外で風にあたるなんて初めてだ。
でも、これが国民には普通の生活である。
私が違うだけなのだ。
頭を思いっきり上げて、空を見上げると星が沢山出ていた。
凄くきれい。こんなに空に星があるなんて。
城を追われたのは昨日のことなのに、なんだか遠い昔のように思える。
凄く時が立ったように感じた。
それくらい、色々ありすぎたのだろう。
「どうした?」
空をボーッと見上げていたら、後ろからカイルが声をかけてきた。
「カイル。バルはもういいの?」
「いまナチさんが寝かせてる。うわ、星が綺麗だなぁ」
カイルが驚いたように感嘆の声をあげるとなんだか得意気な気持ちになる。
「うん。エルシールは自然が豊かなんだ」
そう。エルシールは大国ではないが、自然の多さでは近隣国一だ。



