「カ、カイル!?」
その距離に慌ててしまった。
男の人とこんなに近づくことなんて今までなかった。
見上げると整ったカイルの顔が目の前にあり、変に焦ってドキドキしてしまう。
いやいや!男性と偽ってるんだから、怪しまれる。
そう、自分に言い聞かせるが、女性としての性(さが)なのか。それとも王宮暮らしで男性に免疫がないからなのか、そのドキドキは続いていた。
しかしカイルはそんな私には見向きもせず、茂みの奥を見つめている。
それに私も気がついた。
「カイル?」
「しっ。……誰かいる」
「追手!?」
「いや、あれは……」
カイルはしばらく茂みの奥を見つめていたが、不意に小さく笑った。
「こどもだ」
「こども?」
そう言って、私が振り返るのと、そのこどもが出て来るのは同時だった。
「ヤー!!」
手に太い棒を持ち、威勢のいい掛け声と共に飛び出してくる。
カイルは私を後ろへ引っ張り、前に立ち、涼しい顔でこどもが振りかざした棒を片手で受け止めた。



