狙われし王女と秘密の騎士



どんどんと先を歩くカイルを小走りで追い掛ける。
一度もこちらを振り向ける。し、一度も話さない。
……背中が恐いんですが。
明らかに背中が怒っている。
わかっていながらも、カイルにソロソロと声をかける、


「あ、あの、カイル?カイルさん?」


声をかけるが無視して、角を曲がったので慌てて追い掛けると、曲がった先で立ち止まっていたカイルに思いっきりぶつかってしまった。


「う、痛い……」
「痛いじゃない!何やってるんだよ!」


カイルは低く声を落として、しかし声と表情はかなり怒っていた。
その迫力に言葉に詰まる。


「何って……」
「サルドア兵士総てに喧嘩を売る気か!?投石といい、さっきのことといい、完全に目を付けられたぞ!」


さっきのことは私も悪いが、カイルも手を出した。
そう言い返したかったが、カイルは私を守るためにしたことだ。
きっとカイルがあの場で出てくれなければ、私は兵士に切られていた。
死んでいただろう。
冷静になってそう思うとゾッとした。
カイルには感謝しなければならない。
だがしかし、やはり……。


「やっぱり目、付けられたかな?」
「俺もな」


カイルは深くため息をついた。
そうだ。私だけでなく、成り行きとはいえ、カイルも手をだした。
きっと投石の犯人も確実に探しているだろうし、さっきの騒ぎで人相やら服装から、同一人物と気がつかれた可能性もある。
いや、騒ぎを起こしただけでも目をつけられただろう。
なのに、カイルも手を出したということは……。


「ご、ごめん」


完全に巻き込んでしまったようだ。