その光景は、想像を絶した。
戦というとのを間近で見るのは初めてだったから、思わず足がすくむ。
怒号に悲鳴。
剣と剣が激しく交わる音。
辺りを濡らす赤い血。
それは一瞬でも気を抜いたら命の保障はない。

殺戮の場とはこういうことか。
戦とはこういうことかと初めてわかった。

目の前で繰り広げられる戦場に真っ青になっていると、カイルが私の手を引いた。


「走れ! 地下牢へ向かうぞ! 誰か援護してくれ!」


カイルと私を側近が数名援護するなか、殺伐としている城内を走り地下牢へと向かう。
隣にいるカイルは見事な剣裁きで、私を誘導してくれる。
多くのサルエル兵士は城内へ上がったのか、地下牢へ続く道は手薄になり始めていた。
本来ならエルシール国王が幽閉されている場所は兵士が手厚いはずなのだが。
そこに、サルエル国の動揺と指揮が取れていないことに気がつく。


「シュリ!」


廊下を走っているとカイルは勢いよく私の腕を掴んで引っ張った。
目の前を剣が振り下ろされる。
そこには横から飛び出してきたサルエル兵士が息を切らして立っていた。


「お前、見たことあるな」


サルエル兵士は私を見てニヤリと嫌らしく笑った。
こんな男のような私を見て見覚えがあると言う。
サルエル国王と会ったときだろうか。
カイルは私を引き寄せ、剣を構えた。