「夏紀?!
夏紀!いるのか?!」

トイレの中で俺は叫んだ。


―ギィー


古びたドア独特の音を鳴らしながら夏紀は出てきた。

「う…あ………」

ボロボロと涙を出しながら夏紀は何も喋らない。

「大丈夫か?!
何があった?!」

涙を流しながら夏紀はゆっくりと語った。

「いきなり…後ろから抱き着かれたの………

それで…私…逃げたら……
無理矢理…車に乗せられそうになって……………」

途切れながらも夏紀は話した。

俺はもういいよ、と言うように夏紀の背中をポンポンと叩く。

背中を叩くと同時に夏紀は大声で泣き出す。

泣くな、とも言わず俺は抱きしめた。

あんな喧嘩をしたのに
あんな身勝手な事をしたのに

夏紀はこんな時でも俺を頼ってくれた。

その気持ちに俺は泣きそうになる。

震える小さな夏紀の体がたまらなく愛しい。

「なぁ…」

話しかけると夏紀は鼻を啜りながら俺の目を見る。

「仲直り…したいんだ。
家に夏紀の好きな…デザートいっぱい買っといたよ。」

そう言うと夏紀は笑いながらこう言った。


「もう…太っちゃうじゃない」