敦史は紗結の耳元で囁いた。


驚きなのか、嬉しさなのか、

それとも違う意味でなのか、

紗結は何も言わなかった。


「孝人くんに未練あるままでいい。少しでも俺のことが好きなら、俺のそばにいて」


敦史の言葉に、紗結は大きく何度も頷いた。


このあと、紗結は孝人にちゃんと思いを伝えた。

“敦史が好き”という思いを。


孝人は少し悲しそうな表情で頷いたけど、『幸せになれよ』と言ってくれた。


“好き”という想いのないまま恋人になった二人。

お互い惹かれ合い、さまざまな試練を乗り越えて今、

“本当の愛”というものを知った。


紗結と敦史は、今日も二人手を繋いで歩いている。

二つの手をギュッと握りしめて。