敦史は紗結の手を引きながら、 人気のない場所に行くと手を離した。 「なんか俺に言うことねーの?」 敦史は壁にもたれかかると、怒りを含んだ声で紗結に問いかけた。 紗結は相変わらず下を向いたまま。 「なんで何も言わねーの? ………俺がどれだけ心配したか分かってんの?」 敦史は何も答えない紗結に、訴えかけるように言った。 それでも紗結は答えない。 敦史は紗結を見つめると、 腕を引っ張り体を引き寄せてそっと抱きしめた。 紗結は何も言わなかった。