彼女という特定の存在を避け、曜日で降りるバス停が変わり、女泣かしのレッテルを貼られ、甘い誘惑にすぐかかる。そんな生活を続け、学校ではある意味、勿論悪い意味で有名となった。
 そんなやつを、私が気にする必要など、全くなかった。理由も、なかった。
――1年生までは。

 2年生になり、なんの偶然か私とその『女泣かし』は同じクラスになった。それに加え、私と彼は隣の席になり、地味な私が物珍しかったのか。
 今では、毎朝バス内で彼から「好き」と言われることが、日常となってしまった。
 けれど、彼の『女泣かし』の噂は絶えないし、私は昔そういうヤツに裏切られたことがあった。心の奥から、彼を拒絶するのだ。

 そんな事情を、私の親友がわざと教えたはずなのに、彼からの言葉は止まなかった。むしろ、最近増したように感じるくらい。


 何故、何故私なんだろうか。


 私は、どこかで感じる恐怖に、毎日毎日耐えていた。
 いつか、彼が飽きることを信じて。