『私……あきらめない……』
そう言った瞬間こらえていた涙が頬を伝った。
でも同時に、私は彼に満面の笑顔を見せた。
(私こんなに強かったっけ…)
笑った自分に私自身が驚いた。
本来の私なら逃げ出してしまうとこだと思ったから……
私の笑顔を見て一瞬彼の表情が固まる。そして目をそらした。
「もういけ…話すことはない…」
そう冷たく言うと完全に私に背中を向けてしまった。
『また、来ます…ね……』
私は彼の背中に向かってそう呟き静かに部屋をあとにした。
廊下に出た私は、今まで息を止めていたかのように一気に息を吐き出した。
すると緊張の糸が溶けたのか、後から後から涙が溢れてこぼれ落ちる。
気がつくと、私は廊下を全力で走り出していた。さっきの事が、頭の中をぐるぐる駆け巡る。
(どうしたらいいの……)
彼の本心はわからない…。
もしかしたらホントに迷惑だったのかも。そう思うと不安になる。
ただひとつだけわかっている事は
『私は先生が好き』
それだけが私の支えだった。
でも……
私と彼は、生徒と教師。
彼は、サエさんの死を乗り越えていなくて…。
そして彼女の弟ユウ君の存在。
いろんな事がありすぎて私は少し混乱気味になる。
さっき彼に見せた強い私が、みるみる薄れていくのがわかった。
この恋は、してはいけない恋なの?
弱い心に支配されそうになる自分を、必死で抑える。
(このままじゃダメだ。先生だって幸せになっていいはず…)
やっぱり私は諦める事はできそうもなかった。私は彼に幸せになってもらいたかったから…。
たとえ相手が私じゃなくても…
私は再び強い心を取り戻す。
彼の為に……
それにこの恋は、してはいけない恋じゃない…そう私は信じて前に進もうと思った。
*‥*‥*‥*‥*‥*‥*‥*

